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デジタル探究テクニック

 デジタルチェッカだけでは判断できないデジタル障害の探究

 流行りのフラット(平面)アンテナ使用上の注意点

デジタルチェッカだけでは判断できないデジタル障害の探究

【相談内容】
  • 集合住宅のテレビ共同受信施設で特定のデジタル放送チャンネルのみ受信不良となる。
【障害症状】
  • 時々ではあるが特定のデジタル放送の受信画像にブロックノイズが発生する。
【受信環境】
  • デジタル放送の送信所から約5kmの距離にある強電界地域で、周辺は高層ビルの多い都市部
  • 電波到来方向は建造物により見通しになっていない。
  • 高層建造物による反射波(マルチパス)が多い。
【調査状況】

1. デジタルチェッカによる受信レベル、BER、C/Nの測定結果

18ch20ch21ch22ch23ch24ch25ch26ch27ch28ch
受信レベル〔dB〕61.865.175.680.383.882.882.582.882.479.0
BER0.0E+000.0E+000.0E+000.0E+000.0E+000.0E+000.0E+000.0E+000.0E+000.0E+00
C/N〔dB〕29.130.334.1>35>35>35>35>35>3532.7

 この測定結果からは、受信レベルは所用値の最低46dB以上あり、BERは0.0E+00(この測定器の表示方法で0.0E+00は2×10-4以下を示している)でほぼエラーフリー、CN比はマルチパスを加味したCN比(27dB)を上回っています。

 この測定器は、マニュアルによると以下のような性能になっています。
  • 受信レベルは、測定器の初期設定でサンプル数(選択されている階層内のキャリアを何本測定するか)により1,000本か2,000本かなどにより測定の精度に影響を与えます。
  • BERは本来 “誤りビット数/単位時間当たりの送信ビット数” ですが、この測定器ではビタビ復号後(RS複合前)の誤り訂正数を表示する簡易BER方式を用いています。したがってBERが2×10-4以上(BERが悪い時)では測定誤差が大きくなります。
  • また、CN比は換算CN比を用いています。換算CN比はマルチパスや妨害波の有る場合は誤差が大きくなります。

この測定結果からは障害の発生の原因は判断できませんが、現実には障害が発生しています。
したがって、この例のようなケースでは、測定器の性能を加味して、さらに詳しい調査を行い、判断する必要があります。

2. デジタルTVシグナル・アナライザによる解析

 このアナライザは、地上デジタル放送の各種信号を分析する専用の機器で、高度な測定・分析が可能になります。以下は、アドバンテスト製“デジタルTVシグナル・アナライザ(R3466N)”を用いた例を示します。 通常、現場においては、電波の状態 「(1)受信レベル (2)CN比 (3)遅延プロファイル」 の順に測定し、次にデータを復調した後の状態 「(4)BER(MER) (5)コンスタレーション (6)セグメント毎のMER、またはキャリア毎のMER」 の順に測定します。

(1)受信レベルの測定
 デジタルTVシグナル・アナライザのスペアナ機能により全チャンネルの波形の形を観察します。第1図では、低いチャンネルの方でレベル低下が見受けられますが、これはレベルチェッカの測定結果と同様の傾向です。
第1図 スペクトル機能による帯域全体の傾向の観察
スペクトル機能による帯域全体の傾向の観察
(2)CN比の測定
 CN比は絶対値も必要ですが、余裕度も大切になります。CN比は第2図の縦軸BERが2×10-4の時の理論値20.1dB(64QAM、水色線)を基準にして、実測値は黄色線で表示され、内部で計算の結果CN比の余裕度はNM=23.5dBとなり、十分な余裕があることが分かります。
第2図 正確なCN比とCN比余裕度
正確なCN比とCN比余裕度

しかし、この結果からは障害の原因は分かりません。

(3)遅延プロファイルの測定
 次に第3図のように遅延プロファイルを測定します。
第3図 遅延プロファイル(見やすくするため左右に拡大)
遅延プロファイル(見やすくするため左右に拡大)

 遅延プロファイルは、基本波を中心に左右に反射波が強度とともに表示されます。第3図では、基本波から遅延(右側)した反射波が多数到来していることが観察できます。
反射波は、第3図下部にマーカー値で示されており、この例では遅延時間615.2ns(=0.6152µs)、D/U=-9.02dBが測定されています。D/U=-9dBは反射波としては強い値なので、これが障害となっている事が考えられます。

(4)BER(Bit Error Rate)の測定
 誤り訂正復号化は、送られてきたデジタル信号のランダムなデータ誤りをビタビ復号で訂正し、次にバイト単位の大きな誤り訂正用にリードソロモン(RS)復号の二段階で誤り訂正をします。BERの測定は、ビタビ復号でランダム誤り訂正した後、すなわちリードソロモン誤り訂正の前(Before RS)で測定します。
第4図 BERの測定
BERの測定

 この測定結果からは、Bレイヤ(64QAM)で10-3のオーダーとなっており、規格値の2×10-4を上回っていることが分かります。

(5)MER(Modulation Error Ratio)とコンスタレーションの測定
 MERとコンスタレーションは第5図にように測定することができます。水色のドットが全体的に回転方向に振れていることが見て取れます。また、図中のMER(minimum)値が13.6dBと低い値を示していますので、何らかの障害が影響しています。
また、図中の黄色のポイントはワンセグ(QPSK)のドットを示していますが、このドットは静止しているので障害を受けていません。(7)のセグメント毎のMERの測定からも影響が無いことが確認されます。
第5図 MERとコンスタレーション
MERとコンスタレーション
(6)MER対キャリア特性の測定
 遅延プロファイルの測定結果から近接の遅延波(0.6µs)が有ることが分かったので、MER対キャリア特性を観測すると第6図のようになります。
第6図 MER対キャリア特性の測定
MER対キャリア特性の測定

 横軸は第21チャンネルのセンター周波数を中心に帯域幅5.57MHz内のキャリア毎のMERを示しています。測定の結果、リップル間隔から周波数は1.67MHz(=5.57MHz/10×3メモリ)、時間に換算すると約0.6µsとなり、遅延プロファイルの測定値とほぼ一致します。 さらに、約518+(5.57/10)×7.3≒522.4MHz付近にMERが特に劣化している点が見られます。

(7)セグメント毎のMERの測定
 次に、セグメント毎のMERを測定すると第7図のようになります。(この図は、第6図のリップル点を合成して相互関係を見やすくしてあります。)
第7図 セグメント毎のMERの測定
セグメント毎のMERの測定

 キャリアのリップル位置とセグメントのMER低下点が一致していることが分かります。セグメントは13セグメントの中央をNo.0として左側がNo.1から奇数番号、右側がNo.2から偶数番号で呼ぶので、No.1とNo.6およびNo.9セグメントに影響を与えていることが分かります。 (No.0のワンセグには影響を与えていません。コンスタレーション参照)

3. 調査結果

 以上の調査の結果から、原因は近接の遅延波による障害と推定されましたが、本来であれば地上デジタル放送の特徴であるガードインターバル(126µs以内の遅延波の影響を受けない)の効果で障害を発生しないはずです。

 そこで、依頼者宅所有のテレビ数台で確認したところ、特定機種で発生することが確認されました。しかし、テレビを交換することはできないので、受信アンテナによる遅延波の抑制が効果的であると判断し、高性能アンテナに交換および設置場所の変更で改善を図ることができました。

流行りのフラット(平面)アンテナ使用上の注意点

 最近、当社に寄せられるデジタル受信相談で、外観性を重視した「フラット(平面)アンテナ」をご使用のお客様から多く寄せられるようになりました。

 その相談内容は、「設置当初は良好な受信状態」だったが、「時々、特定のチャンネル(または、全チャンネル)に、ブロックノイズが入る」というものです。

そして、寄せられる受信環境の多くには、次のような共通点があります。
  • 送信所から約20km以上離れた地域。
  • 送信所方向に家屋などがあり(軒下に設置するなど)、完全な見通しになっていない。
    (※すなわち、電波があまり強くない事が共通点としてあります。)
  • アンテナは設置後2~3年経過している。

 そこで、受信状況を調べてみると、受信レベル、CN比ともに、受信破たんするまでのマージン(余裕度)が少ない事が見受けられました。

 このことから、少しの電波変動などの影響を受け、ブロックノイズが発生するようです。 設置当初は、この電波の変動などを受けていなかったため気づかなかったようですが、障害の発生する事例の多くが、 家屋の影響で電波が見通しになっていない事から、変動を受けてしまうようです。

平面アンテナの設置例(高性能型)  
平面アンテナの設置例
【解決方法】

 現在のフラット(平面)アンテナを利用するのであれば、電波の見通しが良好になる場所や、受信高を高くするため、屋根上への設置変更工事をしています

 受信環境により、継続して安定受信をするには、八木式UHFアンテナ使用の工事を実施しています。

 ずばり、スタイルの良いアンテナを発揮させるには、それなりに強い電波が必要です。

【参考事項】

平面アンテナの活用について

 最近、住宅の美観を重視することから、平面アンテナが多用される傾向にあり、各メーカーも新製品を投入しています。

(1)この背景には、外形的な美観の問題もあるが、技術的に以下の理由があります。

  • 平面アンテナは、従来BS用に市販されていましたが、地上放送用(アナログ)はあまり使用されませんでした。これは、アンテナのゴーストに対する妨害を排除する能力(半値幅)が、従来の八木式アンテナ(約30度)に比べ、約80度と広いことが原因でした。
  • しかし、デジタル放送では、ガードインターバルというマルチパスに対して強い方式が採用されたため、テレビではほとんどのマルチパス障害をキャンセルして影響を受けません。このためにアンテナの半値幅が広くマルチパス障害を受けても、障害となりません。
  • また、受信レベルの低い地域では、ブースターに超ローノイズ型(NF=1dB)が開発されたことも一因です。

(2)ループ型平面アンテナ

 平面アンテナは、従来多く使用されてきた「八木式アンテナ」と異なり、ループ型(メーカー呼称:ツインループ型、ツインデルタ双ループ型、サイドフィン型、ループクラスタ型)とスロット型(メーカー呼称:サイドフィン型)に分類されます。

(2-1)
  •  ループ型平面アンテナは、導体をループ状(円周≒ λ )に配置したもので、ループ状のため水平偏波にも垂直偏波にも使用することができます。
(2-2)
  •  指向特性は、基本的にはループが1ターンであるため無指向性ですが、反射板およびループの工夫で数10度となっています。
    前後比は、ループの背面に一定間隔で金属板を設置し反射板とします。
  • これらの詳細データは各メーカーから公表されていませんが、公開特許公報(例、特開2010-268511など)を参照すると大旨の構造を知ることができます。
ループアンテナの構造
(2-3)構造

 ループアンテナは、右図のようにループの上側と下側で折り返しダイポールの形となり、更にループを構成している導体の面積を広く(線状から板状)して広帯域化しています。
また、上と下のループアンテナは等価的にスタックとして働き、利得を向上しています。

 半値幅は、八木式アンテナの導波器に相当する素子が無いために、広くなってしまいます。

 ループの背後には、反射板を設置するために前後比は比較的よい。

(3)スロット型平面アンテナ

 金属板にスリット(波長を勘案した短冊状の穴)を開けたものです。

(4)平面アンテナの使用環境

 メーカーカタログによると、使用できる場所として「強電界」「中電界」「弱電界」と記載がありますが、具体的な受信レベルなどは記載されていません。
公にはJEITA(電子情報技術産業協会)で「地上デジタルテレビジョン放送受信アンテナの電気的特性CPR-5106」として定義されています。

受信アンテナの電気的特性CPR-5106

 しかし、以下の表現について明確な定義が見当たらないので、各メーカーのカタログから「利得」に着目して類推すると、以下のようになります。(JEITA規格:普及型Bアンテナ(5.5dB以上)は、強電界および中電界の近距離に使用します。)

■ 強電界
  • 送信塔が見える範囲、JEITA規格:普及型Aアンテナ(4dB以上)
■ 中電界
  • 70dB/m(約50dBµ)、距離10~50km、JEITA規格:高性能型Aアンテナ(7dB以上)
■ 弱電界
  • 50km以上、JEITA規格:高性能型Bアンテナ(8dB以上)

(5)平面アンテナの特性(メーカー別比較)

平面アンテナ特性(メーカー別比較)
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