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当社は1979(昭和54)年に「受信相談株式会社」創立、主にテレビ・ラジオの電波障害など受信環境の維持・改善業務を展開してまいりました。また、1984(昭和59)年に放送衛星が打ち上げられ、これからは衛星放送の時代が来ることから、1985(昭和60)年に「受信サービス株式会社」と名称を変更し、新たな時代への対応を鮮明に打ち出し、マンション等集合住宅の共同アンテナ改修工事やメンテナンスを主な業務として実施してきました。
衛星放送になると取り扱う周波数もギガヘルツ帯となり、従来のUHF帯よりも格段と難しくなりました。
その当時の苦労話や、楽しかった事、面白い(変わった)データなど、当時を知るものとして、後輩のために何か役立つと信じて記録しておくこととしました。
今では「こんな事!」と言うこともあるかも知れませんが、そんな事もあったのです。当時の私と当社の “ 奮闘!” を感じて頂ければ幸いです。
衛星放送は、当初のBS-15,BS-11の2チャンネル体制からBS-1~BS-15チャンネルとなり、さらにBS17~BS-23チャンネルが拡張されました。
一方、2002(平成14)年には110度CS(右旋)放送が始まり、2018(平成30)年12月には、BS(左旋)放送と110度CS(左旋)放送が開始されました。2600MHz帯域(BS左旋放送)で4K番組4チャンネルと8K番組が放送され、その上の、2748MHz~3224MHz帯域(110度CS左旋放送)では4K番組が8チャンネル放送されています。
このような状況で、集合住宅では当初VHFとUHFの共同受信施設が一般的でしたが、1770MHz→1895MHz→2150MHzと拡張されていき、CS右旋偏波に使用されました。その後、現在では→2600MHz→3224MHzと拡張され、BS左旋偏波、CS左旋偏波に使用されています。
周波数の拡張に対し、どのように対処するか考えていたところへ、NHK(受信技術センター)から従来のUHF共聴施設でBS-IFがどの程度伝送できるかテストをしてくれないかと依頼があり、共同で「ケーブル伝送テスト」のやり方を検討しました。平成元年の6月のことです。
これが「ケーブル伝送テスト」の名称を使い始めた第一歩です。
当社では、この測定の以前から、VHF/UHFさらにBS-IF/CS-IFとチャンネル数の増加に従来のレベルチェッカー等では測定に膨大な時間を必要として非効率であることから、当時、最先端の「スペクトラムアナライザ(スペアナ)」(アナログ式、当時150万円の投資)を導入していました。
このスペアナは、テレビの電波(NTSC方式、映像信号fv)を測定するには大変便利でしたが、100Vの電源が必要な事や、重量が約20kgあり、集合住宅などの階段の上り下りや各部屋を移動するには重労働でした。(当時は、屋外での使用は考慮されていなかった)
このスペアナには、波形表示に同期したスイープ信号を発生する「トラッキング・ジェネレータ(TG)」が付いていましたが当時は使い道が無く、宝の持ち腐れでした。(この機能が付くと、価格が数十万円増加した。)
しかし、先見の明が有ったのか、時代の要請で、「ケーブル伝送テスト」では、TG機能と合わせて、その後の当社の仕事の方向性を決める大変重要な測定ツールとなりました。
先輩の話では、昭和40年頃に機器の周波数特性を測定するには、標準信号発生器(SG)と電界強度測定器(レベルチェッカー)を組み合わせて、測定周波数範囲内を数MHz間隔で測定してグラフ用紙にブロットするので、大変な作業だったとのことでした。
その後、信号発生器の周波数が測定範囲内で自動に発振するスイープ・ジェネレータ(Sweep Generator)が開発され随分と楽になり、細部のレベル変化なども観測できるようになりました。
同軸ケーブルの周波数特性を測定するためには、同軸ケーブルの片端に周波数が自動で可変される信号発生器(スイープ・ジェネレータ)と、他端に信号を受信する測定器(スペアナ)が必要となります。
スイープ・ジェネレータは、単一パルス信号が指定周波数範囲内で移動するので、これをそのままスペアナで表示させても周波数特性を描くことができません。このためにスペアナの「マックス・ホールド機能」を使用して、測定期間の最大値を表示させ、周波数特性を描かせました。
実は、購入したスペアナはTGが付いていたので、スイープ・ジェネレータを使わなくても伝送テストができたのですが、当時はTGは機器の周波数特性を取る物だと信じ込んでいました。それは、取扱説明書に「1m程度の短いケーブルでキャリブレーションを取る」と書いてあったため、この距離を伸ばすことは想像できませんでした。(今考えると、宝の持ち腐れでした。残念)
当社の社員は、スペアナにはある程度習熟していたため、NHKとの共同調査はスムーズに進みましたが、新たに同軸ケーブルの問題点が把握され、このままではBS-IF/CS-IF信号を伝送するのは困難であることが分かりました。
このような実態なので、集合住宅へのBSの導入に当たっては「ケーブル伝送テスト」が有効であることが分かりました。
幾つかのマンション等のケーブル伝送テストを手がけるうちに、使用機器は型名から定格が分かりますが、同軸ケーブルはどの周波数帯まで使用可能か、帯域内の異常(ディップ点、リップルの有無)の判別が付かないことが一番の問題点であることが分かってきました。
一般的に同軸ケーブルは、周波数とともに減衰する特性を持っていますが、実際にはそれ以上に減衰しているのが実情です。
この問題点を調べないでBS-IF/CS-IF等の工事を施工してしまうと、具合の悪い受信者宅がランダムに現れ、原因究明に多大な時間と労力を必要としてしまいます。(最悪の場合、設計を全面見直して”外配線”となってしまう場合もあります。)
このためには、事前にケーブル伝送テストを実施するのがベターですが、実際には測定器の準備、取り扱いの習熟、技術員(最低2名)の配置、結果の取りまとめなど、膨大な業務量が必要となり費用負担がネックとなります。
このためか、いつの間にか業界での伝送テストは当社の専門(得意)業務となっていました。
次に、ケーブル伝送テストを始めたころの諸々の悩み事や新たな発見、苦労したこと等々を書いてみます。
前述のように、測定にはスイープ・ジェネレータとスペアナを使用しますが、その記録には当初「フィルム・カメラ」を使用しましたが、記録の確認は現像が必要で、現場で直ちに確認できないため、当時先端の「ポラロイドカメラ、白黒」が話題となり、早速導入し現場で便利に活用しました。(白黒画面で撮影したのは、当時のスペアナはオレンジ単色画面でしたのでカラーの必要がありませんでした。)
スペアナ管面は、外光の進入を防ぐため「フード付きポラロイド専用カメラ(ピストル型)」で撮影する方式でした。
ポラロイド・フイルムは、1パック10枚入りで約1,500円と当時では非常に高価であったと記憶しています。時たまフイルムの引き出し方が悪く、同時に数枚引き出され、高価なフィルムをボツにする事も多々ありました。また、特に寒い時など、定着液の処理を少しでも速めるためにフィルム自体をよく両手で擦り合わせたり、懐に入れて暖めたものです。
次に、スペアナのビデオ出力(Video端子)の映像を直接「ビデオプリンター」に入力し、感熱紙に印刷する方法に変更しました。この方式では、コスト的に1枚約6円と飛躍的に低価格になりました。
この方式の問題点は、長期保存すると記録波形が退色し、消えてしまうという点でした。このため、早い内に感熱紙からコピー等しておくことが大切でした。また、プリント用紙はロール式でしたので記録紙が途中で無くなってしまうことなどがありました。
前に説明したように、当初購入したスペアナは大変重くて苦労しましたが、時代の要請で、VHF帯からUHF帯、さらにBS-IF/CS-IFと測定する周波数範囲が広がるにつれて、世の中全般にスペアナの需要が増してきたので、メーカーも本腰を入れてポータブル型の開発に努めた結果、いくつかの製品が出現しました。
お陰で、当社も携帯型の「ハンディ・スペアナ」を購入し、集合住宅での調査が容易にできるようになり、大変助かりました。現在では計7台所有しています。
このTG付きスペアナは信号発振部と受信部が一つの筐体に収納されているので、スイープ・ジェネレータは不要になりました。
記録は、スペアナ内部のメモリーに保存し、帰社してから当社で独自に開発した「自動解析ソフト」で報告書を作成し、正確・省力化に寄与しています。
同軸ケーブルの伝送テストをしていると、特性不良のケーブルとその製造年が何故か符合している場合がありました。
上記の同軸ケーブルの製造年(当時は同軸ケーブルに製造年が印刷されていた)を確認すると、第一次オイルショック(1973年)頃の年代と符合していますが、果たしてこれが原因かどうか、確認する術はありません。
しかし、不思議とこの頃の一部のメーカーの5C-2Vには不良品が多く見かけられました。(特定メーカーの1971年製)
これらの異常な特性を示す同軸ケーブルは「充実ポリエチレン型の5C-2V」が大半を占めています。原因としては、外見上に異常は見られませんので、おそらく誘電体の純度不良やムラなどにより誘電率が不均一になったのではないかと思われます。
集合住宅の中には、共聴設備の設置時から同軸ケーブルに「3C-2V」を使用している設備もあります。(おそらく経費節減と思われますが、結果的には増幅器増設や同軸ケーブルの交換など、高くつくのに‥‥)
最近では、BS/CSは当たり前になってきましたので、使用する同軸ケーブルはS-4C-FB相当品、S-5C-FBなど低損失のものの使用がほとんどになっています。
平成元年から衛星放送が本格的に開始され、それまでVHF/UHF伝送していた集合住宅の共聴施設にBS-IF(1355MHz)信号を伝送する要望が増えてきました。
早速、当社で得意の伝送テストを実施したところ、多くの施設でUHF帯までは周波数に沿った減衰特性を示していますが、1GHz帯になると極端に減衰量が増大し、実用にならないことが分かりました。(当時は5C-2Vが主流)
このため、各メーカーではBS放送を一度復調した信号を再度変調(AM変調)し、VHF/UHF帯で再送信するAM伝送方式が開発され、既存のVHF/UHF伝送施設でも、アナログテレビのVHF空きチャンネル(2、5、9、11ch)でBS放送が見られるようになりました。
しかし、この方法はBS放送本来のすべての特徴を再現していないため、徐々にBS-IF伝送の要望が強くなってきましたが、前述のとおり既存施設ではBS-IF帯は伝送損失が増大することから、この大きな減衰量をカバーする「ハイパワーアンプ」(4分配の各端子出力が117dBμV、総合出力124dBμV、送信機並みの出力)が開発され、一時期使用されました。
この方法もCS放送が始まるに至って、BS-IFよりさらに高い周波数のCS-IF(2150MHz)帯を伝送する要望に応ずることが困難となり、同軸ケーブル自体の高品質化(S-5C-FB,S-7C-FB等)をせざるを得なくなりました。
以上の理由から、ケーブル伝送テストの役割が益々大切になってきました。
この施設は、「屋上の受信アンテナから一階まで信号を階数分引き下げて一階に設置したヘッドエンドに接続」しています。一階にヘッドエンドを設置したのは、メンテナンスの容易さや、大規模マンションでのスタジオ自主制作番組との混合伝送に適していたからです。
しかし、この場合のヘッドエンドまでのケーブル長は階数分+アルファになるので、例えば8階の集合住宅では約30mとなり、通常の「上層階から下層階に分配する方式」では考慮する必要の無い同軸ケーブルの影響を考えなければなりません。
この場合、距離が長いのでその損失分を補償するため増幅器を追加します。BS-IF、CS-IFなど周波数が高くなると損失が多くなるため、増幅器をカスケード(縦続接続)にしなければなりません。5段や8段カスケードする施設もあります。
カスケード段数が多くなると、増幅器個々では高出力にできなくなり、電波の品質(CN比)が悪くなります。
また、距離が長いため、同軸ケーブルの途中がきつく固定されることも多く、周波数特性にリップル(うねり)を生じることがあります。
このような施設は、階層が高くなるに従い分配数が多くなるので、各戸に届く電波が弱くなります。高層階になるほど窓から入ってくる直接波との強弱の関係から妨害(直接波飛込妨害)と、ケーブルテレビや光を導入しているところでは、長遅延障害が発生することがあります。
また、上層階ほど壁面端子レベルが低くなることが主原因であることから、このレベルを高くすることで改善されます。改善方法は、引き下ろし線の途中から信号を分岐して上層階に信号を供給します。これにより、上層階も低層階もほぼ同様な信号レベルを供給することができます。
最近の例では、幹線をすべて光ケーブルにし各拠点にONUを設置する設計(HFC)をした大規模施設もあります。
ある学校で、校内に地デジ(UHF)を流すため調査をしたところ、VHF電波の値が低すぎるため、何かおかしいと感じ、ケーブル伝送テストを行いました。
建物間の距離は、目視では約50mと推定しました。ケーブルの本当の長さを知るため「ケーブル位置障害測定器」で調べたところ331mもありました(ビックリ!)。
建物間は近いけれども、配線ルートの配管は既存のものを利用したため、非常に長いルートを迂回し配線したと思われます。
通常では300mもあると実用にならないことが多いですが、この施設では幹線同軸ケーブルにS-7C-FB、S-10C-FBが使用されていたので、伝送テストの結果は意外と損失が少ないことが分かりました。
このような測定には、リファレンス・ケーブルを張ることが無理なので、2台のスペアナを使って1台はTGの発信器として、もう1台は受信器として使用し測定しました。
あるマンションでBS導入当時(1991年)ケーブル伝送テストを実施し、同軸ケーブルの損失が大きい事がわかりました。テレビ配線の交換ができるか調査をしたところ、リフォームしているお宅が多く、配線が複雑で(直列ユニット方式は壁の中を同軸ケーブルが通過している)抜き替え工事が困難だったため、高出力型増幅器の使用と台数を増やすことにより、限界ギリギリで映すことができました。
マンションの同軸ケーブル抜き替え判定調査(例) | |||||||||||
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部屋番号 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 |
ケーブル長(m) | 27.5 | 24.5 | 30.0 | 19.5 | 22.5 | 19.5 | 15.0 | 24.5 | 20.0 | 25.5 | 23.5 |
抜き替え可否 | 否 | 可 | 可 | 可 | 否 | 可 | 否 | 否 | 否 | 否 | 否 |
ケーブル伝送テスト | ― | ― | 実施 | 実施 | ― | ― | ― | ― | 実施 | ― | ― |
このような状況でしたので、その後も継続的に訪問し測定したところ、行く度にケーブルロスが増大していきました。電波の強さを補償するため、1ルートに1台の増幅器を挿入しましたが、それでもロスの増大は止まず、電波は益々弱くなりました。
増幅器の追加も限られたBOX内に増設できなくなったため、仕方なく外に設置するしかなくなりました。BOX外への設置は安全上の問題と美観を損ねるため、最終的には新規に外配線をし解決しました。
同軸ケーブルは、 に比例して減衰します。このため、性能の良い同軸ケーブルでも周波数が高くなると減衰します。一方、テレビのチューナーは、広い周波数範囲に渡ってなるべく一定の入力レベルが望ましいのです。
そこで、増幅器のチルト特性(同軸ケーブルの減衰カーブの上端を基準点 図ではM4:2.6GHz)として、そこから低い周波数帯域に図の白線の特性を持たせ、利得が高い低域(1.2GHzで約12dB)を減衰させます。これにより、同軸ケーブルの周波数特性をチルト特性で補償し、両者の総合特性でテレビ入力レベルを一定に調整します。
しかし、ケーブル伝送テストの結果、同軸ケーブルの周波数特性にディップ点やリップルがある場合は、これを補償することはできません。原因を取り除いてから補償しなければなりません。
全体特性は縦軸を10dBステップで観測し、詳細は1~5dBステップで観測します。
(a)は、10dBステップで観測した同軸ケーブルの減衰特性です。周波数が高くなるに伴って緩やかに減衰している様子が判ります。
(b)は、水色の線のように急激に減衰し、最大で45dB減衰しています。また、570MHz付近にディップ点が観測されるので、(c)のように縦軸を5dBステップに拡大して観測すると最大で25dB減衰していることが判ります。
テレビは新しい時代に入りました。東京オリンピックに向けて、4K放送と8Kスーパーハイビジョンが放送されています。
8Kスーパーハイビジョンの電波は、現在より高い周波数の電波が必要となるため、S-5C-FBまたは同等以上の同軸ケーブルを使用しなければなりません。
市販のテレビ共聴機器は、数年前までは2150MHzまでの右旋帯域の機器でしたが、現在では、3224MHz帯域までの機器になっています。2600MHz帯域(BS左旋)は、2018年12月1日から8Kスーパーハイビジョンが放送されています。さらに「110度CS帯域の上側(2748~3224MHz CS左旋)」も2018年12月1日から4K番組が放送されています。
このため弊社では、従来は2600MHz帯域を上限としてケーブル伝送テストを実施していましたが、8Kスーパーハイビジョン等に対応するため、現在では3224MHz帯域まで測定しています。
精密な測定をするために、トラッキング・ジェネレーター付きスペクトラム・アナライザーを使用した調査を実施しています。
その他、簡易的な伝送テストも実施しておりますので、ご相談ください。