皆さんご存じの「スペクトラムアナライザー」は “横軸に周波数” 、“縦軸にレベル” を表示する測定器です。また「オシロスコープ」は “横軸に時間” 、“縦軸にレベル” を表示する測定器です。
したがって、周波数軸上の振幅変化とその時間的変化を同時に測定する事はできません。
< 専用アンテナによる測定風景 >
この度、導入した新型測定器は、周波数軸上の振幅変化(画面上部にスペクトラム表示)とその時間的変化(画面下部にウォーターフォール表示)を同時に測定することができる画期的な測定器です。
また、名前のとおり「高感度レシーバー」ですので、非常に低いレベル(0dB以下でも)の電波を測定することができます。(スペアナで見えない電波も探知します。)
※弊社では、PR100の取扱説明書を日本語に翻訳し、操作方法解説書を独自に作成しています。ご要望の方はお電話の上、弊社までお越しください。
概要
- 小型・軽量で場所を選ばず自動車で入れないところでも使用できます。リチウムイオン・バッテリを使用、1回の充電で最長4時間動作します。
- 9kHz~7.5GHzの周波数範囲に渡る、高速パノラマスキャン
- 帯域幅:150Hz~500kHzでの、10MHzIFスペクトラムと復調
- 6.5インチ・カラーディスプレイでのスベクトラム表示とスペクトログラム(ウォーターフォール表示)
- 本体SDカードへの測定データの保存
- リモート制御、データ出力のためのLANインターフェース
- ポータブルでの使用を考えた人間工学と堅牢なデザイン
- 軽量3.5Kg(バッテリを含む)
- アクティブ方向性アンテナR&S HE300による放射位置の探索
アプリケーション
無線通信内での妨害波の調査・探知
- 機器の故障や装置のトラブルによる無線妨害波を調査により、素早く、効率的に方位や電波レベルなどを計測し、妨害源を特定します。
ウォーターフォール波形
利用者特定無線サービスのモニタリング
- 複数のスキャンモードでのモニタリングや、割り当てられた周波数でのモニタリングにより、精密なリアルタイム測定や、極短時間に発生する障害波もウォーターフォール波形により表示できます。
雪崩ビーコン
緊急信号の追尾
- アクティブ方向性アンテナR&S HE300とHE300HFを用いて、山岳遭難者からのトランシーバーや無線信号の位置情報を特定したり、雪崩で生き埋めになった際の緊急信号源を探査します。(発信機の持参者に限る)
妨害源の追跡・特定
- アクティブ方向性アンテナR&S HE300とHE300HF、GPS地図ソフトを用いて、イベント会場、会議室、ホール等のほか、マンションや一般住宅で、盗聴波を追尾・妨害電波発信源を地図上に表示し特定します。
PR100カタログより
即席爆弾装置(IED)の探索
- アクティブ方向性アンテナR&S HE300とHE300HFを用いて、極微小な電波を探査したり、超高感度の受信機能により受信スタンバイモードにおいても、微弱な局部発信器の漏れを探査・検出します。またGPSによる位置情報も収集します。
将来への適応
- 広い周波数範囲を卓越した性能は、将来への適応が可能です。
- 現在および将来の無線サービスに対し、信号解析の能力を有します。
復調データの情報処理
- アナログ変調信号は、直接復調され、その内容はヘッドフォンや内蔵スピーカーに出力されます。
- デジタル復調信号は、I/Q復調によりベースバンドに変換され、内部処理あるいは、LAN経由にて出力されます。
- デジタル復調信号は、R&SソフトウェアR&S GX430にてオフライン解析できます。
レーダー信号とパルス信号の検出
- レーダー信号等の短いパルスや、原因不明の信号源を検出します。最大10MHzスパンのFFTによるリアルタイムスペアナ機能によりレーダー信号のような短いパルスのスペクトラムを解析できます。
【調査事例】
調査用センターフィード型アンテナ
BS・CSパラボラアンテナに直接飛び込むレーダー波が局発と干渉したため、BS・CSコンバータ10.678MHzに相互変調障害が発生し、テレビに障害を与えていました。この障害範囲を特定し、パラボラアンテナのイミュニティの低下により新規交換などで解決しました。
大容量データメモリ内蔵のモニタリング受信機
- 集められた情報は、PR100内蔵のSDカードに保存されます。
- モニタリング時の記録されたデータは、R&SソフトウェアR&S GX430にてオフライン解析できます。
リモート制御でさらに操作性向上
- LANインターフェイスにより完全にリモート制御できます(IEEE 488.2 SCPIコマンド)。例:無人監視局
直感的で容易な調査
- ユーザは簡易なメニューと操作性の良さで、短時間で操作を習得できます。
- 見やすい6.5インチ・カラー・ディスプレイ
バッテリオペレーション
- バッテリを含めて3.5kgの軽量
- 1回の充電で、最長4時間の動作
特徴的な機能
リアルタイムスペアナ - 10MHz帯域のFFT(高速フーリエ変換)
- 周波数掃引ではなく直接デジタル信号処理なので、バースト状の信号、短時間に周波数変化する信号、パルス性ノイズなどを漏れなく捕捉することができる(最大10MHzスパン)。※ Internal Recording オプションにより連続記録も可能
受信機 - 変調波の復調受信
- 最先端のデジタル信号処理を用い、高い感度での信号受信と、どんなに小さな信号であってもリアルタイムに検出できる信号分解能力が、PR100の最大の特徴です。
- 多方式の復調再生機能(AM/FM/SSB/CW/IQ/PULSE)
※ ただしデジタル変調の復調機能は有しない(ベースバンドIQの記録と出力のみ)。
専用アンテナ - GPS、コンパス付き
- 内蔵のGPSとコンパスにより、位置情報と方位が取得できる。
- PR100との組合わせで、アンテナ係数を設定することなく自動的に電界強度が表示される。
- プリアンプにより、微弱信号も受信測定できる。
アンテナの種類
9kHz~20MHz | 20MHz~200MHz | 200MHz~500MHz | 500MHz~7.5GHz |
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HE300HF(オプション) | HE300 |
地図表示 - 測定地点や方向を地図上に表示
- 世界中の地図データが用意されている。
※ 専用ソフト(OSM-Wizard)を使ってダウンロード
- 専用アンテナを使っての方向探査、三角法による位置測定
4つのモード
基本モード
FFMモード | ----- | 固定周波数の受信とスペクトラム測定 最大10MHzスパンのFFTによるリアルタイムスペアナ(取りこぼし無し) |
PSCANモード | ----- | 10MHz以上のスパンのスペクトラム測定(繋ぎ合わせによる擬似掃引) リアルタイムではなく通常の掃引スペアナに近い機能(取りこぼし有り) |
(参考) |
AMラジオ帯 | ----- | 全帯域のリアルタイム測定可能 |
FMラジオ帯 | ----- | 10MHzまでの範囲であればリアルタイム測定可能 |
地デジ | ----- | 単一チャンネル(6MHz)であればリアルタイム測定可能 10MHz以上の帯域を一度に観測する場合はPSCANモード(擬似掃引) |
特殊なサーチモード
FSCANモード | ----- | 一定の周波数ステップごとに順次受信 ラジオ放送のように周波数ピッチが決まっている信号のサーチなど |
MSCANモード | ----- | あらかじめメモリーに設定した周波数を順次受信 |
アンテナの接続
(1)測定する周波数に対応するアンテナエレメントをアンテナグリップに取り付ける
(2)アンテナケーブルのNコネクタをPR100本体の ANT に接続
(3)データコネクタを AUX1 に接続
(注意)
アンテナを接続するとき、取り外すときは、PR100本体の電源をオフにします。
データコネクタ(AUX端子)は挿入する向きが決まっているので、かん合面の形状を見て、よく注意しながら慎重に挿入してからネジを回してしっかり固定します。
電界強度を測定する場合は、必ずPR100本体でアンテナの種類などを設定する必要があります。単にスペクトラムを観測する場合や、レベル(端子電圧)を測定する場合は、特にアンテナの種類を設定する必要はありません。
PR100のリアルタイムスペアナによる測定例
○ ごく短時間しか発生しないスペクトラム波形の観測
< 送信波の周波数スペクトラム >
< Aの周波数スペクトラム > < Bの周波数スペクトラム >
この測定画像は、特定小電力400MHz帯のトランシーバの送信波を、PR100のリアルタイムスペアナで観測したものです。ウォーターフォール表示には、一定の時間間隔ごとに送信と受信を繰り返している様子が記録されていますが、送信開始のとき、ほんの一瞬だけ送信周波数以外のスペクトラムが観測されています(AおよびBの部分)。
これは、送信波が立ち上がって安定するまでの極めて短時間だけ発生する過渡的なスペクトラムであり、通常の掃引方式のスペアナで確実に測定することは困難ですが、PR100のリアルタイムスペアナでは漏れなく観測することができます。
当社では、このような短時間に発生する障害を確実に捉え原因究明します。解決に向けた対策も行っておりますので、ご相談お待ちしております。
以下にPR100での機能の一例と測定事例を幾つか紹介します。
弊社が専門とする各種妨害波(無線、コンピュータ機器、医療機器、盗聴器、ブースター、レーダー等)の探知に活用する予定です。
<(例1)地上デジタル波(東京)の測定 >
上段:スペアナ機能(510-570MHz)
下段:上段の横軸(周波数)に合った縦軸の時間変化(上から下に時間が経過)
赤→緑→青の順にレベルが低くなります。
この例の場合は、地デジの電波が比較的強く継続して受信されています。
注)右下のコンパスは測定アンテナの方向を示しています。盗聴電波はGPSと地図ソフトで発信源を特定します。
<(例2)一定周期で変化する電波の測定 >
上段:スペアナ機能(76-108MHz)左側の電波はFM放送です。
下段:赤い帯が一定周期で変化して、レベルが変化しています。
<(例3)多周波の発生した様子 >
上段:スペアナ機能(849-861MHz)
下段:近接した多数の電波が継続して発射されています。ウォーターフォール表示。
<(例4)不規則に発生した電波の測定 >
上段:スペアナ機能(849-861MHz)
下段:不規則に発生した電波が赤く表示されています。デュアル・モード表示も可能。
<(例5)盗聴電波の場所の特定例 >
電波のモニタリング
- テレビ受信、認可された無線通信、特定無線、携帯電話、その他の通信サービスのモニタリング
- 9KHz~7.5GHz帯の電波(長波、中波、短波、超短波、およびレーダー)の調査・測定
アプリケーションと主要な特徴
- 増幅器などの故障や無線装置のトラブルによる妨害源の特定
- 空港やイベント・集会会場などで、故意による妨害電波の特定および除去
- 山岳遭難者の場所の特定(現在試験運用中)
- 雪崩で生き埋めになるなどの事故で、無線機もしくは携帯電話機を持参している場合(状況による)の発信場所特定(現在試験運用中)
- 携帯電話使用者の場所の特定(現在試験運用中)
即席爆発装置(IED)の探索
- テロ対策に寄与します。超高感度の受信機能により、IEDが受信モードで動作していても、その発信器から漏れる極微弱な電波を確認できます。
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